留学をする理由

 実は留学に対して明確な目的はない.

 自分は今年の4月からアメリカのとある大学に交換留学している.留学していると,なぜ留学しているのか理由を聞かれることがしばしばある.当たり前の疑問だろうが,実は自分自身もよくわかっていない.ただ,「自分でもよくわかっていないんですよ〜笑」と言うと,考えなしな人だな,無計画な人だなと思われる.無計画なのは事実だが,思われていいことはないので,とりあえず表面上の理由を用意して隠すことにしている.表面上の理由は「実践的なデータサイエンス知識と英語力の獲得のため」としている.一応この表面上の理由で留学の奨学金に応募して通っているので,カモフラージュは成功しているのだろう.また,人からの質問対応以外の場面でも,留学の目的はあったほうがいいのだろうなと思う.ちまたでは「目的意識が大切」「手段と目的を混同するな」と言われているし,これまで生きてきて,なにかを達成するためには目的が大切なのは重々承知している.だけど,目的がないのは事実なのでしょうがない.

 留学の目的がないとは言ったが,これには少し語弊があって,弱い目的みたいなものはある.

  1. 英語力の向上
  2. 機械学習の知識・技術の向上
  3. 海外での生活経験
  4. 視野を広げる
  5. モラトリアムの延長

これらは目的とも言えるが,なにかもっと大きい目的を達成するための目的,つまり手段だと私は考える.こう考えた場合,真の目的はなんなのだろうか.一応考えてみよう.

  1. なぜ英語力を上げたいのか?
    かっこいいから.コミュニケーションが好きだから.将来役に立ちそうだから.
  2. 機械学習アメリカで学ぶ必要はあるのか?
    ない.機械学習が好きなのは本当だが,面接で受かるためにでっちあげただけ.
  3. なぜ海外での生活経験が必要なの?
    わからない.なんとなく将来役に立ちそう.
  4. なぜ視野を広げたいの?
    視野が広い人は成功しやすい気がするから.
  5. なぜモラトリアムを延長したいの?
    学生を終わりたくない.就職したくないわけではないけれど.

一応書いてみたが,ろくな理由がない.奨学金の面接では真の目的として「将来的に日本企業の海外進出を支援できる人材になりたい」といい,そのために英語力とデータサイエンス知識が必要で,それを身につけるために留学をしたいと言った気がする.だが,この真の理由は取り繕ったもので真実ではない.もちろん,日本企業の海外進出を支援してもいいなとは思うが,全然他の仕事でも構わない.他の仕事でも構わないと思うようでは真の目的としてふさわしくないのだろう.以上を踏まえると,自分には留学の真の目的はないとも言える.

 目的の解像度の問題も少しあるかもしれない,人によっては,英語力の向上とかでも目的だと思うかもしれない.ただ,自分はそれらは目的ではなく手段だと思うので,そう考えたときに目的がないという結論になってしまうのだ.目的がないのは仕方がないので,目の前の留学は手段を目的化しつつ生きるしかないのだろう.その中で真の目的を見つけれたらいいなと今は思っている.