どうすれば英語を聞き取れるようになるのだろうか

 現在,自分はアメリカに留学しているのだが,英語を聞き取ることができない場面が多々あり,それで少し苦労している.一対一の英会話ならなんとかなるのだが,ネイティブ同士が話し出すと途端にお手上げである.ディスカッションとか今何話してんだ状態である.こんな文章を日本語で書いている時間に勉強しろよと思われるかもしれない.しかし,そもそも聞き取れるとは何なのか,なぜ聞き取れないのか,どういう訓練が必要なのか,そういったことをメタ認知しつつ英語学習に取り組むのも大事だと思うのである.なお,私は英語の専門家でもなんでもないただの大学生なので,間違っていてもご容赦いただきたい.

 まず,「聞き取る」という言葉の意味だが,これは文字通り「聞いて取る」,つまり聞いて理解するということである.ここで大切なのは「聞こえる」のと「理解する」のは別物で,両方できてていて初めて「聞き取れ」ている状態になる.例えば日本語であっても,知らない内輪ネタで盛り上がられたり,専門外の知識を語られたり,またはつまらない授業を聞き流しているという状態だと,聞こえてはいるものの理解はしていないので「聞き取れ」ているとは言えない.

 英語を聞き取るためには,単語を「聞く」ための訓練と聞こえた文章を「理解する」訓練の両方が必要だと考えられる.もちろん完全に分離するのはナンセンスだ.聞こえるからこそ理解できるのだし,逆に会話の内容を理解できているからこそ,細部が聞こえるというのもある.ただ,話をわかりやすくするために両者を分離して考えてみたい.以下,「聞く」ため,「理解する」ために必要な能力と,その訓練方法について述べていく.

「聞く」ために必要な能力

・クリア発音の理解

・省エネ発音の理解

 クリア発音(勝手に作った造語)とは,スペル通りのクリアな発音,いわば強形の発音のことを表している.省エネ発音とは,スペル通りではない,省略された発音のことである.これには,弱形,リダクション,リンキング,省略形などが含まれる.わかりやすい例をあげると,”Rock and Roll”という文を「ロック・アンド・ロール」と正直に発音するのがクリア発音,「ロックンロール」と発音するのが省エネ発音である.アンドが弱形のンに近い音になることで,ロックンロールと発音されるのである.実際の英会話では,文中の大事な単語のみをクリアに発音し,他のどうでもいい部分はモゴモゴした省エネで発音されることが多い.そして,この省エネ度合いは会話のカジュアル度合いが高まるにつれて強くなっていく.そのため,実際のネイティブとの会話についていくためには,単語帳に乗っているようなクリア発音だけでなくて,省エネ発音への理解が大切なのである.

 クリア発音は単語帳なりで勉強するとしても,省エネ発音はどのように勉強すればいいのだろうか.主観ではあるが,省エネ発音の勉強には,しっかりとした教材を用いた清聴がいいのではないかと思う.しっかりとした教材とは,アナウンサーのようなクリア発音の詰め合わせみたいな教材ではなくて,手加減なしのネイティブ生英会話をスクリプト付きで解説してくれる教材のことを指す.これはステマでもなんでもないのだが,私は省エネ発音の勉強のために「モゴモゴバスター」という教材を使っている.名前とウェブサイトが正直胡散臭い感じなのだが良い教材だと思う.内容は小講義+ネイティブ生英会話の詰め合わせみたいな感じである.正直難しく,聞き取れなさすぎて自分にイライラすることもあったのだが,一周してみて確かに少し成長は感じる.3ヶ月までなら返金できたはずなので,興味がある人はやってみてはどうだろうか.

「理解する」ために必要な能力

・会話の前提知識

・英文法・文構造の知識

・英文から意味への変換能力

 文章の理解には,当たり前であるが会話の前提知識が必要である.英会話が理解できないとき,英語力というよりかは,会話に対する前提知識がないせいで理解できないこともしばしばある.アメリカ人の講義を理解できないのは英語というよりかは専門知識がないせいかもしれないし,ネイティブとの会話を理解できないのは,お店の名前や有名人の名前を知らなかったりするせいかもしれない.他には,英文法や文構造の知識も必要となるが,これは受験英語で散々やってきたことなので得意な方も多いと思う.

 最も訓練すべきなのは,英文から意味への変換能力である.注意してほしいのは,「意味」とは「日本語訳」という意味ではない.もっと抽象的な,その意味を表すもやもやとしたイメージの塊みたいなものである.例えば,「Apple」を「りんご」と訳してから「赤い果物」を想像するのではなく,最初から「Apple」→「赤い果物」と変換すると言った具合である.また「He is going to the park」と聞いたら,彼という存在が公園に向かっている,もしくはその予定であるといったイメージが頭に思い浮かぶといったことである.難しそうに聞こえるが,日本語でも無意識にやっていることなので,絶対にできるはずである(たぶん).

 この変換能力の獲得には,多聴による訓練が適していると思う.一つ一つの文章を大切にするというよりかは,様々な場面の英語を聞いて,英文→意味への変換訓練を大量に行ったほうが効率がいいのではないかと思う(何度も言うが完全に主観である).私はこの訓練として,NetflixやHuluでアニメを英語音声+CC英語字幕で見まくっている.映画やドラマでもいいとは思うのだが,自分にとってはめちゃくちゃ速く,理解どころではないので断念した.対し,アニメは映画やドラマより発音がクリアで,英文→意味への変換を適切に訓練できると感じている.あと,単純に私自身がアニメ好きだというのも大きい.日本のアニメだとDeath Noteを繰り返しみている(現在3週目である).また,涼宮ハルヒの憂鬱とある科学の超電磁砲なども面白いしクリアなのでいいかもしれない.また,アメリカのカートゥーンだと「Family Guy」も見ている.ブラックジョークが好きな人におすすめだ.

 まとめると,会話を聞き取るためには,「聞く」かつ「理解する」能力が必要である.そして,主観ではあるのだが,「聞く」ためには省エネ発音の学習が重要で,そのためには教材を用いた清聴訓練が大切である.そして,「理解する」ためには英文から意味への変換能力の向上が重要で,そのためにはアニメやドラマなどを英語で見まくるのが大切だということである.清聴と多聴の割合も難しい問題なのだが,最初は清聴メインで,省エネ発音に慣れてきたら徐々に多聴の割合を増やしていくのが理にかなっていそうである.また余談だが,できれば座学だけではなくて,ネイティブたちの手加減なし英会話に混ざってみるのもいいと思う.正直はじめは全く聞き取れないと思うが,聞き取れないにしても勉強意欲を向上させることができる.また,教材やアニメと違って,聞き取れないときの緊張感が大きいので必死になる.それで脳が活性化して成長する(ような感じがする).

 自分自身,ネイティブの手加減なし英会話にがっつり混ざれるほどの英語力には程遠いのだが,まだまだ時間はあるので焦らず自分のペースで頑張っていきたい.